●ひい
寒いですねえ。
ホントにもう。
(^~^;)
●昨日の
続きです。

永青文庫で開催中の 『
春画展』 レポ。
※12月23日まで。
公式サイト>>
http://www.eiseibunko.com/shunga/スタート地点はここです。
目白駅。
池袋のとなりの駅なのに、漂うのどかな郊外感・・・(笑)。
いや、目白。
むろん都心ですし、すごくいいところなんですけどね。
文京区といえば、なんといっても学習院。
それから椿山荘と、
鳩山会館。
わたしのイメージはそんな感じだなあ。

日曜日の朝9時に、目白で待ち合わせ。
気合が入りすぎていたせいか、15分はやく着きました。
普段なら昼まで寝てるのに、謎のやる気(笑)。
さっむーい朝でした。
おつき合いくださった某さまにも、心から感謝。

目白台三丁目のバス停で降りて、さっさと永青文庫へ。
※アクセスに関しては昨日のブログをご参照ください。
徒歩でほんの数分です。
このあたりはいかにも、という感じのお屋敷町。
閑静な住宅街です。
朝の太陽に映えるモミジがきれいでした。
なお>>
このあたり一帯は、元は細川家の下屋敷(しもやしき)の敷地だったそうです。
(
春画展の入場を待つ間に、永青文庫の職員が説明をしてくれました。)
※永青文庫はそもそも、細川家所有の美術品や史料を収蔵する美術館です。
こんだけ広くて、下屋敷。
「ってことはつまり、上屋敷(かみやしき)や中屋敷(なかやしき)もあったわけで・・・(汗)」
ひょええ。
大名家ってすごい。
いや、これは肥後熊本藩細川家がすごい、というべきか。
(現在の当主はご存知、元首相の細川護熙氏。細川幽斎から数えて18代目だそうな。)
あとになって、調べてみました。
熊本藩細川家の江戸藩邸の場所。
上屋敷があったのは、現在の丸の内。
丸の内OAZOの建ってるあたり。
さすが江戸城に近いですね。
中屋敷があった場所は、今でいうと港区高輪。
旧高松宮邸や東宮御所のあるあたり、ですって。
しゅごい。
今でいう超一等地ばっかりですね。

永青文庫に到着したのは、開場時間の9時半よりも10分~15分ほど前。
すでに数十人、門扉の外に並んでいました。
男女よりどり、みんななごやかな雰囲気。
この、なんというか、雰囲気ってありますよね。
どういったらいいのかな。
同好の志の醸し出すオーラというか、存在感。
それをひしひし感じました(笑)。
目白の駅で人待ちの間に、中年女性のグループを幾つか見かけました。
同じような背格好の人たちはバスの中にもいたし、同じ停留所で降りた人たちも数人あった。
それがね、なんというか、見ただけでわかるんだ(笑)。
ああ、この人たちもたぶん
春画展に行くんだろうなって。
オタクっぽいとか、スケベっぽいとか、そういう意味じゃないですよ。
断じてちがう(笑)。
コミケに向かう無言の人の群れの中に多い、男性オタクほど “いかにも” でもない。
一見ごくごくフツーの、ちょっと身ぎれいなお姉さん/おばさん。
服装もお化粧も、とりたてて目立つところがあるわけじゃない。
でも、わかるんだなあ。
『
春抱き』がご縁でリアルにお会いしたお仲間たち、今まできっと数十人以上。
もしかしたら、そろそろ3ケタに届くかもしれない。
その彼女たち、つまり自分をも含めた母集団ですが、大雑把に同じ雰囲気なのです。
不思議といえば不思議、かな・・・?
どこか似てる。
というよりも、同じものに反応する特殊なレーダーを積んでいる者同士、かな。
おもしろいですよね。
そのせいか、ものすごく気分が楽でした。
なんてことない、ホームグラウンドみたいなもの(笑)。
わはは(汗)。



9時半の開場と同時に、列が少しずつ動きました。
砂利道を進んで、永青文庫の敷地内へ。
朝のやわらかな白い日差しがね、斜め上から差しこんで来るでしょう?
背の高い木々の合間から。
それが庭の樹木を照らすのです。
スポットライトみたいに、名残りの
紅葉を輝かせる。
それはそれは美しくて、寒さにしびれそうになりながら、
写真を撮り続けました。
外で並ぶのはキツイけど、光の
紅葉の共演はごちそうでした。


ちなみに、この展示会の垂れ幕。
「春画」と毛筆で書かれているのですが、これは細川護熙氏の揮毫(きごう)です。
ものすごくいい字だと思う。
しかし、「揮毫」ってあんまり使わない言葉だね・・・(笑)。


ところで、この建物。
昭和の初め頃、旧細川侯爵家の事務所として建築されたそうです。
外観の
写真しか撮れませんが、なるほどレトロ。
どこか大正ロマンっぽい雰囲気でした。
オリジナルのガラス窓もいくつか残っているそうです。
ちょっと軽井沢の旧三笠ホテルとか、そういう雰囲気の内観。
殿様が住むわけじゃなくて、あくまで事務所ですから、そこは質素ですけどね。
☆
さて、玄関の前で列をつくって並ぶこと、だいだい10~20分くらい。
(晴れてたとはいえ日陰で寒かったので、防寒対策は必須です。)
順番に誘導されて、しずしずと建物に入りました。
あたりまえですが、ここから先は撮影禁止。
スマホの着信音を鳴らしてるアホもいたけど、電話ももちろんダメです。
※チケットを持っていてもいなくても、列は同じです。
※身分証の確認はさすがになかった(笑)。
(18歳未満に見えるかもしれない、とおごっていたわけではない。よ。)
コインロッカーやトイレなど、ひととおり揃っているらしい。
幸い職員はたくさんいるので、必要なら聞いてみてね。
ギシギシきしむ木製の階段をのぼって、まずは4階で行きます。
最初はふつうの板張り。
途中から緋毛氈が敷いてありました。
「あは、この感じって・・・」
かつての歌舞伎座で、4階の幕見席まで延々と階段を上らされたときと似てる・・・(笑)。
階段の幅はもちろん、劇場みたいに広くないけど。
なんかなつかしい。
・・・ふう。
汗をかきつつ、最初の展示室に到着。
今回の
春画展では、
①第一展示室(4階)に、肉筆の春画。
②第二展示室(3階)に、版画の春画。
③第三展示室(2階)には、豆版や細川家所蔵の春画コレクション。
という展示構成になっています。
展示スペースはさして大きくはない。
その意味では、全部じっくり見てもそこまで疲れない・・・って、いいたいところだけど。
たしかに、歩く距離でいえば大したことない。
でも、とにかく疲れました(笑)。
途中で足が棒になるかと思ったぐらい、へとへとになったわ(笑)。
たぶんね、かなーり熱心に見たからだと思う。
展示品ひとつひとつは、あまり大きくないわけです。
巻き物にせよ、版画にせよ、サイズは限られている。
ぎっしり詰まった人の群れがスローに、超スローに進んでいく。
それを、ただひたすら待つ。
自分がその展示品の真ん前、最前列に来るまで待つ。
その繰り返し。
根性を入れて、というか気長に待たないと、何も見られません(笑)。
肉筆の春画。
これがもうね、すさまじいクオリティなのです。
圧倒的な美しさ。
かなり古いものから、近世までいろいろ。
(ちなみに春画の
歴史は、はるか平安時代までさかのぼるらしいよ。日本スゴイ。)
なにしろ、描いてる人たちが超一流の絵師ばかり。
鳥居清信、歌川国貞、丸山応挙、狩野派、菱川派。
絵師不詳も多い。
素人目にもわかるほど、保存状態がいい。
上等な紙や布、上等な絵具。
表装も豪華絢爛。
金箔や銀箔がほどこされているものも珍しくなく、とにかくお金がかかっています。
春画が上流(貴族や武家)階級のものであったこと。
長いこと大事に、だいじにされ続けてきたであろうこと。
名のある絵師が注文を受けて、気合を入れて描きあげた傑作であること。
その事実に、まず打たれます。
優美な色合いの美しいこと。
着物の模様から織りから、背景の建物の様子、それこそ畳やすだれの目ひとつひとつ。
実に丁寧に、あますところなく描写されているのがすごい。
で、やることやってる(笑)。
そりゃもう、モロに。
過度のデフォルメ。
夢想や理想も入ってるんだろうけど、まぐなむ様は軒並みフランスパンのサイズ(笑)。
「・・・うっそお・・・」
んなわけあるかい。
男女関係は、おもしろいほど対等に見えました。
男がコナをかけてるのに、そっけない女性の姿。
いやですよ、なんて風情であっちを向いているのに、下半身は男のほうを向いてたりね(笑)。
しれっと何か他のことをしてるふりで、手がこちょこちょ。
ささっと、着物のあわせにしっかり侵入していたり。
スケベ坊主が大奥に忍び込んだら、逆に女性陣に襲われちゃった!
みたいな絵もありました。
男ひとりを奪い合うたくさんの女性ってパターン、わりと多め。
(これも男性のファンタジーなシチュだから?)
三人以上が同衾してる、いわゆる3Pもいっぱい。
覗きはほぼ、アートの世界。
のぞき構図はかなり頻繁に登場します。
あきらかに女が主導権を握ってると、わかるものも多い。
ユーモアや、遊び心が見えるのも多い。
実におおらかに、大胆に、恥ずかしがることもなくやってます(笑)。
すばらしい(笑)。
かと思うと、超らぶらぶもありました。
所かまわずキスしてる、いちゃいちゃ。
そう、思ったよりも接吻は多かったなあ。
これは嬉しい発見でした。
(頬に女性の口紅、つまりキスマークをつけた男性もいたよ。)
ことの最中、しっかり指と指をからめている男女。
えぐい性描写とは裏腹に、この「手はしっかり」が乙女なのよ。
恋愛してるじゃん!
って感じで、ちょっとほっとする。
正常位でひしと、下から思いっきり抱きついている女性。
これは
岩城さん・・・もとい、秋月さんに見えました。
おまえを俺にくれ、の彼。
のけ反った顔は上気していて、恍惚の表情。
目はほとんど閉じている。
そこに覆いかぶさる男も、ものすごーく気持ちよさそう。
(もちろん春画ですので、アレはもろにがっつり奥まで、です。はは。)
日本画の人物は、みんな引き目かぎ鼻で顔が同じ、と思ってますか・・・?
とんでもない。
おへちゃもいれば、見るに堪えないブサイクもいました。
老若男女、なんでもござれ。
その一方で、美男美女もいました。
貴重品です。
絶対この男、自分がイケメンって知ってるよね。
そう思わせる余裕の表情のお兄さん、とかね(笑)。
古い肉筆の春画はね、詞書(ことばがき)があるの。
登場人物の紹介や状況の説明がある。
場所をあらわす背景もしっかり描き込まれている。
それが、時代が下るほどになくなっていくのだそうです。
わお(笑)。
どんどん絵柄がデフォルメされていく。
詞書は少なくなり、やがて消え、背景の草花すらやがて不要となる。
ただひたすら、半裸の男女がからみあう。
なんかね、BLマンガ(というかエロ漫画)の変遷と同じだなあ、と思ったわ。
言い訳がどんどん減って、ただヤる。
どんどん絵が洗練され、どんどん表現が過激になる。
どんどんリアリティを離れ、あり得ない設定でのえっちに発展する。
・・・どこかで聞いた話だ、と思ったもんだ(笑)。
版画の春画。
菱川師宣、鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川国芳。
オールスターキャスト、という感じですね(笑)。
有名なのがいっぱいでした。
わたしが気に入った作品は、月岡雪鼎、勝川春英、歌川国安、溪斎英泉など。
いいですか?
二次創作/パロディ、いっぱいあるんですよ。
源氏物語の主人公、光源氏を今(=江戸時代)に蘇らせたもの。
伊勢物語の「裏」本。
(表=ご存知、在原業平の物語。その男女関係部分のみを、グラフィックに描いている。)
義経がどうの、ってのもあったらしい。
(「義経千本桜」をパロって「義経専犯枕」とか、おやじギャグも真っ青。)
人気の歌舞伎役者同士をからませた、今でいうナマモノやおい本。
それに近いのが、歌舞伎の台本をマンガ化したもの。
ある意味、王道の
二次創作ですね。
人外の生き物と交わる、禁断の獣○ものもありました。
かの有名な北斎の「蛸」も、その一種でしょう。
大蛸と小蛸がくねくねと海女を襲う、例のアレ。
これはひょっとすると、(男性向けエロ漫画に多い)触手モノの走りかもしれない。
都合よく、男がミニチュアサイズになって世間のえろを見て歩くもの。
こっちは、いわば透明人間モノの先駆者かも?(笑)
(現代のエロ漫画には、都合よく女性には姿が見えない状態でイタズラをする、的なのも定番ですよね。)
ああ、そういえば。
人外じゃないけど、ガイジンものもあったな。
よく描いたよなあ、と思います。
ついでにいうと、幽霊モノも。
この世の者ならざるものと交わる、あるいは襲われる。
(日本の文学にはときおり見られるテーマですね。)
男女の妄執。
これは非常に出来がよくて、今でも脳裏にこびりついています。
版画は、雄弁です。
地の文があり、台詞があり、ちゃんと擬音まである。
コマ割りもあり、引きのコマ、主人公アップのコマなんてのもある。
※しつこいですが、春画ですのでやることはやってます。派手に。
「なんだか・・・」
そう。
現代のわたしたちが知ってるエロ漫画のルーツは、みんなここにある。
今の世の中にしかないと思ってたけど、それは間違いでした。
人間の頭の程度って、江戸時代からあんまり変わってないんだなあ(笑)。
昔の人が好きだったアレコレは、今の我々も好きなのね。
まったく新しいアイディアなんか、現代人に思いつく余地はないのかも。
えろくてナンセンスで、ときに辛辣で、だけど決してユーモアを失わない春画。
一貫して、えっちを肯定してるのが凄い。
それもそのはず。
今とは倫理というか、道徳というか、えっちに対する感覚が違いますよね。
決して、昔はモラルが低かったとか言いたいわけじゃありません。
その反対。
幕府による規制はあったかもしれないけど、庶民の感覚として罪悪感があったのか・・・?
その辺、ずいぶんちがうと思います。
豆版。
これは生まれて初めて目にしました。
9センチ×13センチのちいさな世界。
携帯に便利なミニサイズの紙面に、超絶技巧のフルカラー版画。
何十回、重ね刷りをしてるんでしょう。
とにかく細密画みたいで、めちゃくちゃに細かくて美しい。
エッチングみたいに、画面に凹凸があるものもあるのよね。
まじわる男女の身体が立体的に、盛り上がっているように見える。
どういうことなんだ、あれ。
目を凝らして見るのは大変ですが、その価値は十分にあります。
髪の毛、一本一本かいてあるよ。
おくれ毛がほろり、とか。
着物の合わせからちょっとだけ覗く女性の乳○とか。
そんなのまで、こまやかに描かれている。
鳥肌もののクオリティです。
それにしても、ルーペが欲しかったなあ(笑)。
☆
というわけで、さて。
これでも、ざっと大まかな感想のつもりです(汗)。
実に豊潤な時間でした。
これはたしかに、一級の美術品だわ。
ここにある作品を「わいせつ物」だと思う人がいたら、そっちのほうがオカシイ。
だってエロいかえろくないかで言ったら、えろくはないもの(笑)。
少なくとも現代人の目には、エロには見えないと思います。
(いわゆるオカズにならない、という意味。)
そういう次元じゃない、と思う。
まあ、たしかに、生牡蠣とフランスパンが大量発生してたけどね・・・(汗)。
「ぱ・・・秋のパン祭り(爆)」
失礼しました。
●というわけで、
では、またね。。。