●なぜいけないのか
と問うと、ちょっと考え込んでしまうかもしれません。
http://www.asahi.com/special/070426/そう、西武球団が、「これは見込みがある」と思った若い野球選手たちに、お金を与えていた問題のことです。囲い込みというか、青田刈り(青田買い)というか・・・要するに、「将来はライオンズに入ってね」とという裏約束のためのお金のやりとり。
矢面にたっているスカウトだけでなく、その選手の家族や、所属していたチーム(高校だったり、社会人野球だったり)のトップをも巻き込んで、球界を揺るがすスキャンダルになってますね。
それが、まあ発端だとしたら。
そこから派生したのが、高校の「スポーツ特待生」問題。アマチュア野球のルールでは、「野球選手であることを理由に」奨学金をあげたり、学費を免除したり、その他とにかく、優遇しちゃいけないんだそうです。
こっちのほうは、野球以外のスポーツにはそういう規制がないらしくて(すべての競技種目でどうなのかは知りませんが)、大騒ぎになってますよね。全国の、いわゆる高校野球の「強豪」が、このルールに反してることがわかって、次々と春の大会への参加辞退を表明してます。
●このふたつは
リンクしてはいても別問題のようだけど、結局は、同じ発想から来てますよね。いかに自分のチームに、優秀な人材を確保するか。・・・そういう意味では、野球に限らず、スポーツに限らず、企業カルチャーにも当てはまる心理だと思います。
で、これはずいぶん即物的な言い方ですが、自由主義経済社会である以上、カネがものを言うんだよねえ。
ヨーロッパのサッカーを見ていれば一目瞭然ですが、お金のある強豪クラブは、膨大な資力をつぎこんで才能ある選手を獲得し、それでさらに強くなる。弱いクラブは、いくら戦力を補強したくても、すぐれたプレーヤーを買うお金がない。・・・そう、まさに悪循環です。
トランプの「大貧民」みたいに、強者がもっと有利になり、弱者がさらに貧しくなる(笑)。そんな、残酷な社会のように思います。
日本の野球界でも、これと似たようなことが起きている・・・ということ自体はだから、驚きません。
っていうか、たまたま西武の件が発覚し、たまたま何名かの選手の名前が公表されたけど(あっと驚くような有名選手ではないのが皮肉です)、ほんとは、もっと蔓延してるだろうって気がします。大なり小なり、どの球団もやってるだろうし、きっと、アマチュアのころからそういうお金を受け取ってた選手も、たくさんいるんでしょうね。
●バランス
が難しいんだろうなあ、と思います。
職業柄かもしれませんが、「よりすぐれた能力に対して、それなりの対価を支払う」ということ自体は、わたしには悪いこととは思えないんですよね。(もちろんルールがある以上、それに違反してはいけないと思います。ここでは、あくまで思想論でね。)
プロの世界なら、腕一本で評価され、それでどんどん実績をつくって、その見返りとして高給をとって・・・それって、ごく当然のことだと思います。
でも、今回問題になった理由は、お金をもらってた人たちが、まだアマチュアだったから、あるいは高校生だったから。市場原理を、「教育の場」であるはずの高校や大学に押しつけるのはよくない・・・ってことなんでしょう。
でもそれも、頭ごなしに、すべて悪いとは・・・やっぱり思えない。(しつこいですが、わたしが個人的にどう思おうと、アマチュアのルールが「いけない」と決めてる限り、処分はあるべきだと思ってます。ルール違反を奨励してるわけじゃ、ありませんので。)
●たとえば
わたしが高校生の頃から(たぶんもっと前から)、私立の高校では、いろんな特待制度や奨学金制度があったと思います。
陸上競技でスポーツ推薦をもらって、どっかの私立高校に行った同級生とか、周囲にそういう人はいたと思う。ちょうど、成績がいいと奨学金がもらえたりするのと一緒で、そういう「一芸に秀でた」同級生を、わたしたちは納得して、受け入れていたような気がします(笑)。
人よりもすぐれた才能があり、本人も周囲もそれを生かし、磨き上げようと思う・・・ってのが、差別(特別扱い)であるとか、学業をおろそかにしてるとか。そういうふうには、思えないんだよなあ。
一度しかない人生、持って生まれた才能。
それを見つけるのも、うまく伸ばすのも才能でしょう。いくら天賦の才があっても本人の適性は別物だし、才能が開花しないで終わるキャリアもあるでしょう。
青田刈りといえば、そうかもしれないけど。でもスポーツや芸術の才能の場合、大人になるまで放置してたら、もう価値がなくなっちゃうかもしれないよ。
・・・もちろん、わかるんだ。
青田刈りを許したら、お金のあるプロ野球球団とか、お金が自由になる私立の高校ばっかりが、若い才能を追っかけて、先取りしてしまうかもしれない。(というか、もう起きてるんじゃ・・・。)
あっちこっちの、「将来ものになりそうなコドモ」にお金をばらなく余裕のないチームは、ジリ貧というか・・・きっと長期的に、苦戦を強いられると思う。
カネがものを言う世界だけど、カネだけがすべてじゃない。特定のチームばっかりいつも勝つようになったら、それはそのスポーツにとって、ファンにとって、いいことではない。そんな議論は、当然あるでしょう。あるべきだと思う。
●・・・あれれ
なんだか、論旨がずれてきたような・・・(苦笑)。
要するに、「青田買いの行き過ぎを防ぐ」と、「若い才能に投資する」のどこかに、バランスのいい場所がないのかなあ、って。都合のいい発想かもしれないけど、100%でも0%でもない、落としどころがあってもいいのでは、と思います。
だってほら、非凡な人は非凡なんですもの。評価されるべき才能は、どんどん発掘され、日の目を見てしかるべきかと・・・。
※西武の裏金の件を見てもわかりますが。アマチュアの頃からお金をもらってた人たちが、じゃあ、プロの世界で華々しく活躍してるかっていうと、そうでもないですよね。いくら才能があると認められても、現実はきびしいものなんだと、あらためて実感させられます。