●思わず
「いいひとの真実」、連想しました。
ほら、女性が男性について、「あの人、いいひとよね」とコメントするとき、それは究極的には否定の意味だ・・・というアレです。
否定というより、魅力や能力の欠如、かな???
どこか見るべきところ、美点があればそれに目が行くけど、特段なにも褒める箇所がない人を形容するときに、「いいひと」はしばしば使われる。
耳にやさしい言葉で、まるで褒めているみたいに聞こえるけど、気持ちの上ではバッサリ、切って捨てているのかもしれません。嫌いではないし、悪人じゃないかもしれないけど、わたしには不要です、みたいな。
「いいひとって、本当はどうでもいい人っていう意味なのよね~」
とは、とある悪友の暴言(笑)。
ハトヤマさんが常々いいひとだ、と言われていたというのは、なんとも示唆的です。
(これには多分に、故意なのかめぐり合わせなのか、オザワさんが悪役を一手に引き受けていたから、というのもあるでしょうけど。)
個人的には、辞任の知らせを聞いても、「ハトヤマさん、いいひとなのに、可哀想ね」とは、思えなかったなあ。
だって彼は、どちらかというと「いいひと」なんじゃなくて、八方美人だったと思うから。。。
●そのうえ
最後までハトヤマさんは「内向き」だったのかな、と思いました。
党利党略というか、党首としての判断なんでしょうね。
オザワさんを道連れにしたと強調するあたり、参院選が迫る中、他党に攻撃されるポイントをなるべく減らそうと腐心した挙句・・・ってのが明らかなので。
鳩山首相辞任:迷走の果て…支持率急落、投げ出す結果にたしかにこれ、「投げ出した」感が強いもの。
あの政権交代の盛り上がりは、期待感は、どこに行った?
たとえて言うならば、親が完成させた複雑なジグゾーパズルをバラバラに壊して、「じぶんでやるもん!」とひとりで最初からやり直し始めたものの、全然わからなくて、収集がつかなくなって泣きながら放り出した子供、みたい。
それが本当に子供ならば、可愛い身の程知らずで済むし、そういう経験から学んでいくものも多いと思いますが、こと政治家、そして総理大臣ともなると、
「やっぱりできない」
「イヤになった」
じゃ困りますよね。。。
とはいえ、身を引かなかったらそれはそれで、厚かましいと非難されただろうとも思うので、首相の進退って難しい。どっちにしても身勝手、無責任だと言われちゃうってことでしょうから。
Japanese PM Yukio Hatoyama resigns amid Okinawa row驚きはしませんが、失望感はあるかなあ。
「目指したものは間違っていない。国民のために誠心誠意、努力したんです(でもダメだったんです)」
という趣旨の言葉が、とてもむなしく響きました。
今日の「天声人語」にもあったのですが、「結果」がすべての世の中で、善意や努力は評価されません。厳しいようですが、ビジネスの世界はそういうものだし、政治家だって、本来は同じであろうと思います。
※言うまでもないことですが、善意や努力に価値が無い、といってるわけではありません。
極端な言い方をすれば、たとえ人柄が悪くても、遊んでばかりでも、国民との約束をきっちり守る政治家のほうが、有権者には評価されるんじゃないかしら。
(実際にはまあ、人望がなくて不真面目な政治家にはおそらく、国会や官僚を動かして政策を実行することはできないでしょうから、これは屁理屈かも?)
思うに、善意や努力は、自ら口にするものではなくて(それでは言い訳にしか聞こえない)、おまけ的に他者から評価されればありがたい、そんなシロモノなのかもしれません。
たとえば、ですが。。。
①ハトヤマさんはかつて、「普天間基地の移設先は最低でも県外(できれば国外)」と言った。
(血の通った人間として、日本人として、沖縄の払っている犠牲を無視できないというのは、自然な感情であると思います。これが彼の「善意」「誠意」の部分。)
②総理になっていろいろ知れば知るほど、県外/国外への移設が容易なことではないと気づく。
(いったんは決まっていた話を反故にした時点で、アメリカとの関係は微妙な雰囲気になったことでしょう。困難な再交渉に立ち向かう覚悟を決めた上で、持久戦になっても実現させるというほどの意気込みが、長期的ビジョンが、政治家としてのハトヤマさんにあったんでしょうか?)
③さて、どうする?
「5月末の決着」に固執したということは、要するにアメリカとの関係を最優先させたってことですよね。
今になって考えれば、そこがすでに間違っていたのではないか・・・と思います。
基地の移設先をあらたに探すのが大変なことくらい、おそらく素人にもわかるのだから、もし人間として、誠意を込めて本当に真剣に沖縄の負担軽減を考えるのならば、
まずは、移設の現行案をストップさせる。
そしてせっかくの新政権なのだから、新しい視点で日本の安全保障について、国民と一緒にゼロから考えようと提案する。
第二次世界大戦後の、東西冷戦の中で生まれた安保条約は、本当に今の世界、アジア情勢に照らして、日本にとって最善のフレームワークなのか?
・・・ってね、そんな問いかけから始めればよかったのに、って思います。
(正直、沖縄以外に暮らしている国民にとっては、唐突に現れた基地問題に汲々とする政府が、それ以外の重要な課題にまともに取り組んでいない、と映っているのも忘れてはいけない。そんな意識のギャップを埋めるのも、ハトヤマさんのお仕事だったのだと思います。)
アメリカとの、これまでの協調関係をすべて否定する必要はない。追い払おうという発想ではなくて、これは「基地ありき」の固いアタマをほぐそう、ってことだから。
むろん、こんな根源的な見直しが、数ヶ月で済むわけがない。
じっくり時間をかけて、国内だけでなく対外的にも慎重に、多角的に考えることが必要です。
「今の日本には、こういうかたちの安全保障が望ましい」
という結論が出れば、その中での米軍の役割も、自然と見えてくるのでは・・・?
(その時間があれば、冷静に落ち着いた態度で、アメリカ政府や移設候補地との交渉にも望めると思うし。)
ただ闇雲に
「キライだ! 減らせ! 出て行け!」
と言うよりも、しっかりした論拠をもって交渉にあたるほうが有利だし、アメリカにとっても悪い話ではないだろう・・・と思うんだけど、甘いのかなあ。
総理にしても、どうせ国民に謝罪するのなら、(もともと短期間で達成されるとは思えなかった)新たな候補地探しの失敗ではなくて、「5月末決着」が延びてしまうことを詫びたほうが、ずっと理屈が通っていただろうに、と思います。
・・・まあ、事後に何を言ってもね。
辞任しちゃったってことは、「最低でも県外」という口約束さえ、どっかに吹っ飛んでしまうかもしれない、ってことですから。
●評価すべきところは
褒めなくちゃいけない、とは思います。
政権交代という、その事実。
国民に淡い希望を抱かせただけで、なんとも後味悪く終わっちゃったような気もするけど、無駄だったとは思いたくないですね。
それから、事業仕分け。
基地問題にすべてかき消されてしまった感がありますが、後者はもっと評価、推進されてしかるべきかも。
お役所や(たくさんある)関連団体が、何にどのくらい税金を使っているのか。それは本当に必要な出費なのか。・・・それを可視化して、国民だれにでもわかるようなプロセスを作り出したって、ホントに画期的ですもの。
だけど、
「オザワさんを辞めさせた」
ことを、まるで手柄みたいに言ってほしくはないよ~。
●あとは
国民次第、ですね。
ハトヤマさんとオザワさんが退陣して、「はい、クリーンな民主党でござい!」って参院選に臨んで、それで・・・有権者は、騙されてくれるかしら?
民主新代表、菅氏が軸 小沢氏の動向焦点 首相辞任やってることは自民党と変わらないね、って。
いちばんそう言われたくないはずの政党なのに、なんだか結局、派閥だの院政だの順送り人事といったコンセプトは死なないんだなあ、と思いました。
「You can't teach an old dog new tricks」
英語に、こんな慣用表現があります。
直訳すれば、「老いた犬に新しい芸は仕込めない」。歳をとると、身についた長年の習慣は抜けないし、斬新な発想が出てこなくなったり、変化についていけなくなったりする。
逆に言えば、鉄は熱いうちに打て、ってことでしょうか。
民主党の幹部って、元々は自民党だった人たちが多いから、「自民党みたい」なのもむべなるかな・・・?