重責から逃げない精神力

●團十郎ショックは

続いています。

あたりまえか。

市川團十郎さんご逝去

團十郎さん 闘病続けた壮絶人生

父は大きな器、嫉妬すら…海老蔵さん涙こらえ

団十郎さん逝く 海老蔵、麻央が看取る

団十郎の粋

(最後のリンクは過去記事で、團十郎の闘病を詳述したもの。)

我が家もお通夜会場状態でしたが、気になって実家に電話すると、

「今、勝手にお通夜をやってるんだけど・・・」

と父の第一声。

やっぱり、同じ思いでいるんだなあと感じました。

変ですよね、おかしいでしょう。

滑稽だと思われてしまうかもしれない。

いくら偉い名跡の、有名な役者さんだとは言っても、もちろん他人様です。

舞台では何度も、何十度も見たけれど、あくまで何百人もいる観客のひとりとしてです。

家族でも友人でも、同僚でもご近所さんでもない。

(もっと正直に言っちゃうと、生前の彼を贔屓だったと言うことすらできない。)

それなのに、どうしてこんなに沈痛な気持ちになるんでしょうね。

でも本当に、本当に悲しいのです。

あんまりのことに、神様に文句を言いたい気持ちなのです。

この喪失感をどうすればいいのか、なんだか意味もなくうろうろしてしまう。

「どうしよう、どうしたらいいの」

って・・・わたしが慌てようが泣こうが、なにも変わらないのに。

アホみたいですよね。

わたしですらこうなのだから、彼のご贔屓筋、そしてご家族のショックはどれほどなのか。

想像するに余りあります。

(危険な状態ではあったけど、それでも安定していたのが、いきなり急変したと聞いています。)



●團十郎

としての重責。

凄まじいものがあったろうと思います。

思うに彼は、まだその責に耐えられないうちに、市川宗家を背負ってしまった。

海老蔵になっても、團十郎になっても、まだまだだと言われ続けた。

若くて経験値に限界があったし、何より、花形役者だった父親と比べられ続けた。

鬼籍に入った天才役者と比べられたら、そりゃあ、フェアじゃないだろうに。

たとえていえば彼は、自分の限度を超えるウェイトリフティングに挑み続けた人。

ではないか、と思います。

最高で50キロしか持ち上げられないときに、120キロは上げろ、と言われた。

無理難題だと思うけど、彼は黙々と、筋トレを始めた。

最初はなかなか結果が出ないし、見た目の変化もない。

世間の目は必ずしもやさしくなかったけど、彼は諦めなかった。

誰も見ていないところでも、地道な鍛錬を重ねた。

そして気づいたら、70キロ、80キロ、100キロを持ち上げられるようになっていた。

ふと周りを見渡すと、同じ重さをリフティングできる人は、ほんの数人しかいなかった。

もう十分に凄い、十分すばらしい。

世間がそう誉めるようになっても、彼はひたすら、120キロを上げるべく努力を続けた。

たぶんもう、110キロくらいまではこなせるようになっていた。

―――そして、その道の途上で、とうとう力尽きた。

團十郎の凄さは、その血の滲むような努力の果てにある。

そんな気がします。



●とうとう

力尽きた・・・そう、なのかもしれません。

身体的にもう、限界だったのかもしれない。

ここまでよくもった、という気持ちもないわけではないのです。

だけど、惜しい。

あと1ヶ月で、孫息子に会えたのに。

あと2ヶ月で、新しい歌舞伎座に立てたのに。

悔しすぎる、恨めしい運命です。

さみしくて、大きな穴がぽかんと空いてしまった感じ。

歌舞伎界にとって、あまりにも大きな損失です。

しかも、このタイミングで。

勘三郎を亡くしてまだその傷も癒えていないのに、また、こんなことになるなんて。



●勘ちゃんの

ときとは、それでもずいぶん心境が違います。

少なくとも、個人的には。

もうちょっと冷静で、もうちょっと客観的(かもしれない)。

あの慟哭は、あんなのはめったに味わうもんじゃないと思ってます。

團十郎のいない新・歌舞伎座。

それを憂える、その気持ちは変わりませんが。

4月の最初の演目、どうなってしまうんでしょう。

序列の厳しい世界なので、おいそれと代役を立てるわけにはいかない。

西のトップ=藤十郎に対して、東のトップ=團十郎の組み合わせのはずだった。

(ちなみに序列といいましたが、現在、東京の歌舞伎役者の頂点に立つのは菊五郎さんです。)

團十郎が舞わないとなると、菊五郎さん・・・?

でもそうなると、彼の他の出し物(弁天小僧ほか)にも影響が出るでしょう。

日本駄右衛門は、誰がやるの?

幸四郎さんあたりがスライドするのかな。

五月の三人吉三は、代わりに・・・吉右衛門さん?

六月の助六は―――これはなんとなく、追悼ということで、海老蔵に行きそうな気がします。

ふつうなら、こけら落としでベテランが勢ぞろいするため、若い役者さんにでっかい(主役クラスの)役はなかなか回ってこないんですけど。

でも、江戸の歌舞伎座だから。

そのこけら落とし公演なら、助六をやるのは「市川宗家」じゃなくちゃダメだろう、と。

※助六をやれる役者さんなら、もちろん仁左衛門も含めて、いっぱいいますけどね。

でもこのシチュエーションでは、大ベテランであればいいってもんじゃないので。

(ちなみに、これは歌舞伎トリビアですが、旧歌舞伎座での観客動員記録!を持っているのは、なんと孝夫時代の仁左衛門。おまけに演目は「助六」だったりします。関西の役者なのに、とんでもないわね。江戸の役者の立場はどうなるの。お相手はもちろん、玉三郎です。)

・・・などと、まあ。

考えてもしょうがないことを、考えてしまいます。



●それにしても

團十郎、逝く。

まだ、信じられない。

最後に観たのは、猿之助の襲名披露公演でした。

「将軍、江戸を去る」の徳川慶喜役。

普段あまり團十郎ファン・・・とは言えないわたしだけど、あれは良かった。

團十郎の気品、清々しさ、そして重厚な存在感。

荒事で知られる役者さんですが、そこにいた慶喜は、繊細そのものでした。

すさまじい心の葛藤を、プライドを、微妙な声の抑揚で表していた。

最後に江戸を去っていく幕切れでは、その背中に哀れを感じたほど。

歌舞伎役者としてはド素人の中車を相手に、舞台をひとりで背負っていた。

余韻の残る、静かな芝居でした。

あれが彼の最後の舞台になりました。

わたしにとっては、ね。

当分、歌舞伎座に、「團十郎」はいなくなります。

いつかは海老蔵が継ぐだろうけど、まだまだ先でしょう。

7年か、10年か、少なくともそのくらいは先。

そして、「勘三郎」という役者もいない。

こっちはおそらく、もっと長いあいだ空席になるだろうなあ。

本当に、寂しいものです。



●そして

今回あらためて、思い知ったこと。

贔屓の役者さんは、そこに元気でいてくれるうちに、観に行かなくちゃだめね。

というか、「そのうち」はだめね。

勘ちゃんも、團十郎も、まさかこんなに早く逝ってしまうとは思わなかったもの。

特に勘ちゃんは若いので、あと20年は猶予があると思ってました。

だって、ずっと元気だったし。

バタバタと病気が続いてすら、どうせ戻ってくるとしか思えなかった。

(むしろ團十郎のほうが、よくぞ戻って来てくれた、という感じだった。)

だから―――あんまり書きたくはないけど、やはり心配なのは孝夫ちゃんです。

あのお方もあまり身体が丈夫じゃないし、何度も大きな手術をしています。

孝夫ちゃんは、大丈夫なのか。

67歳、今月は博多にいますね。

(勘三郎に代わって、勘九郎の襲名披露につきあってる。)

いつまでも、いつまでも元気でいてほしいけど、どうなのか。

昨年の暮れに出た、彼のDVD。


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何度も観ていますが、ずいぶんプライベートなところまで取材させているのね。

ファンはもちろん大喜びですが、ふと、心配になるのです。

だって、今までなかったことだもの。

これ、どういう心境の変化なんだろうって。

単に、孫かわいさに・・・って理由なら、いいんですけど。。。



●お天気は

明日から、また荒れるようです。

「暴風雪」って言葉、予報にあったけど、ホントでしょうか(汗)。

どうか、あまりひどい雪になりませんように。


【05/02/2013 02:37】 歌舞伎2013~ | Comments (0)
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プロフィール

藤乃めい

Author:藤乃めい
ロンドン在住の自称☆ヘタレ甘々ほもえろ字書き(兼エッセイ&レビュー書き)。別名=ましゅまろんどん。

2008年秋より、出向で六本木に島流し中。

純愛☆官能大河ドラマ『春を抱いていた』をこよなく、果てしなく愛してます(笑)。岩城さん至上主義。寝ても醒めても岩城京介氏のことしか考えられず、日常生活に支障が出ることもしばしば(爆)。・・・いや、マジで。

常に人生破綻の危機に怯えつつ、今日も愛の溢れる純文学☆ほもえろ道の探求に精進してます(笑)。

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