ちょっと読書感想 (水魑の如き沈むもの)

●こんな

夜中に、大雨警報とか。

いやすぎる。

※東京、千葉、埼玉。


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何事もないといいのですが。







●最近の本

本は相変わらず、いろいろ雑多に読んでいます。

再読も多い。

が、なかなかレビューを書くところまで行かないなあ。

全部きちんと記録しようと思うこともあるけど、無理っぽいですね。

時間がないか、そこまでのモティヴェーションがないか。

そういう感じです。





「水魑(みづち)の如き沈むもの」
三津田信三
講談社文庫

大ざっぱないい方をすれば、三津田信三は現代の横溝正史。

(いや、それだけじゃないけど。)

このシリーズの探偵役=刀城言耶(とうじょうげんや)はさしずめ、現代の金田一耕助か。

(いや、言耶の職業は怪奇幻想作家であり、全国を旅して怪異譚の蒐集をしてるわけですが。)

乱暴な紹介ではあるけど、だいたいこんなところじゃないかと思います。

当たらずといえども遠からず。

三津田さんには、純粋なホラー小説も多い。

そういうの、好きな人は死ぬほど好きだものね。

ちなみにわたしはホラーは好みではない(笑)。

理屈の通らないひたすら怖い話だけ・・・には、あまり魅かれないタチです。

おどろおどろと不気味で、因縁だの因習だの、タタリだの呪いだの。

忌み山だの、憑き物だの、ここで声をかけられても決して振り向いてはいけない、だの。

そういうのだけなら、のーさんきゅう。

ただね、そういうホラー要素に埋もれた謎だの、確執だの、因縁だの。

そこから起きる怨恨だの、殺意だの、不可能犯罪だの。

そしてそれを合理的に、現代人の(だいたい)納得できるかたちで解決してくれるお話(=ミステリ)。

となると、途端に大好物になります(笑)。

どうしてだろうね?(笑)

「そんなん、似たようなもんじゃん!」

って人もいると思いますが、わたしにとってはえらい違いなのです。

結局、謎解きが楽しいんでしょうね。

どんなに怪奇浪漫的に見えても、さいごには現実的な答えが見つかる。

どれほど気味の悪い事件でも、死霊や蛇神さまのタタリではなくて、人間の仕組んだ犯罪である。

その謎が解かれるプロセスが楽しくて、また、ほっとするんでしょうね。


というわけで、さて。

わりと最近読んだのが 「水魑(みづち)の如き沈むもの」 です。

刀城言耶シリーズの長編では、5本目。

本格ミステリ大賞の受賞作で、「このミステリーがすごい!」での評価も高かった。

“ホラーとミステリーの見事な融合”

ってのが、このシリーズの売り。

そらもう、大いに期待して読みはじめました。


※以下、ネタバレはないけど若干は小説の内容に触れています。


・・・が、あれれ。

「んん???」

実際に蓋を開けてみると、どうも勝手が違う。

いや、たしかに悪くないんだ。

期待通りの設定だし(ある意味では予定調和)、おどろおどろした因習もばっちり。

水魑(みづち)という謎の神様もおもしろい。

怪しげな登場人物もたっぷりで、しよく出来ていると思う。

思うけど、どこか薄い。

なんだろう、どこか邪悪さが足りない(笑)。

ライト感覚なのです。

さらさら読みやすいけど(いつもの)中毒性はない、とでもいえばいいのか。

うーん?

なんだろうね???

濃厚な民俗学的ワールドに没頭できない、そんな感じ。

自分なりに、その理由を考えてみました。


ひとつめ。

「厭魅(まじもの)」「首無(くびなし)」「山魔(やまんま)」にあるような、圧倒的な怖さ=ホラー要素が薄い。

※上記はいずれも同シリーズの先行作品。

得体のしれない薄気味悪さ。

いつ何が誰に起こるか、まるで見当のつかない不気味さ。

同じ日本、おなじ昭和(戦後まもなく)なのに、こんな場所に紛れ込んでしまったら怖すぎる。

そう思わせる邪悪な空気を、そこまで感じない。

常識ではあり得ない設定と、もっとあり得ない(極端な)人物造形。

・・・にもかかわらず(笑)、そういう世界が日本のどこかにあるのだと思わせる。

圧倒的なパワーとディテールで、積み重ねられる怪異譚で、読者をねじ伏せて納得させてしまう。

このシリーズの強みはそこなんだけど、今回そこがやや欠ける。

そうとしか思えません。

たとえば「厭魅(まじもの)の如き憑くもの」には、まじもの、カカシ様、ナガボウズ。

山神様、ナガナワ、生霊、その他もろもろ。

何種類も、何重にも怖くて正体不明の、その土地に根差した怪異があった。

その地名の由来から、登場人物の名前に至るまで、あらゆるところに歴史と謎と怪異がひそんでいた。

文句なしに怖かった。

要するにアレです。

「こわいよー、夜中にトイレに行けなくなるよ!」

的な、昔ながらの怪談としての薄気味悪さがあった。

正体の知れない邪悪な何か。

人間を襲う何か。

そういう過剰なまでの怖いナニかが、水魑(ミヅチ)にはない。

山の奥の大きな池にひそむ何か。

ときに大雨で田畑を流し、ときに旱魃で村人を困らせる何か。

―――うん、こわいよ。

たしかに怖い。

でもそれは、既存の(この場合は龍神様みたいな)神様に似てる。

ありえない、考えられないほど異様な、底知れない悪意とはほど遠い。

呪われた村を覆う大いなる悪しき影・・・のような存在であるはずなのに、怖さが足りない。

どこか、弱い。

そう思ってしまったよ。


ふたつめ。

リアリティとの兼ね合い。

個人的には、こっちのほうが致命傷かもしれない。

上記のとおり、三津田ワールドは昭和の前半が舞台です。

戦後まもなく、おそらく昭和20年代後半くらい。

都市部からとおく隔絶された超田舎の山村であり、独特の因習バリバリ。

人々は信心深く・・・というより、かなり迷信深い。

神社の宮司が祭祀を取り仕切るばかりか、ほぼ村を仕切っているような状態。

・・・という前提条件をもってしても、アレだよ。

それでも現代であり、日本のどこかなのです。

そうであれば、変事が起こりひとが異常な死を遂げれば、当然ながら警察が呼ばれるはず。

警察に介入されたくない心理が村サイドにあったとしても、そこには限界があるはず。

でもねえ。

このお話には、警察の介入を頑なに拒否する長老が登場します。

彼の理屈は(屁理屈だけど)わかるから、それ自体はいいのよ。

そういう頑固な、自分勝手な、前時代的な老人がいてもいい。

でも、彼の脅しの手段がヒドイ。

(もし警察に知らせたら、○○がどうなってもいいのか・・・知らんぞ? 的なやつね。)

お粗末なまでにヒドイし、それに屈してしまう周囲(刀城言耶含む)の言動もひどい。

「いや、そこは強行突破でしょう?」
「いや、オマエか警察に行って説明しろよ」

ツッコミどころが多すぎて、クライマックスなのに冷めてしまう・・・(汗)。

「いや、それはないよ・・・」

どうしても警察を排除するなら、別の方法を考えるべきだったと思う。

もうちょっとリアリティのあるやり方。

「警察が来られない」

都合のいい設定なんか、いくらでも考えられる訳です。

ミステリ書きには有名な、「吹雪の山荘」的な、ね。

(交通も連絡手段も寸断され、犯人も被害者も探偵役もみんな同じ館に閉じ込められる・・・的なストーリーは、ミステリ書きが一度はつかう設定だと思う。)


みっつめ。

はっきり言おう。

このシリーズのほぼ唯一の弱点は、常連キャラにあまり魅力がないこと。

―――なのです(爆)。

個人的な評価ですけど、もちろん。

ミステリなんだからこの程度でいい、という意見もあるでしょう。

だけど、ミステリ=人物造形が未熟、というのはあまりにも早計です。

(宮部みゆきや高村薫を例に出すまでもなく、緻密な人物描写を得意にするミステリ作家もいくらでもいる。)

でも、残念ながら、刀城言耶シリーズはそうではない。

のよね・・・(汗)。

探偵役の刀城ですら、実はキャラが十分に定まっていない。

人格の重層的な肉付けもあまりない。

彼には変なクセがあって、たしかに特徴的なんだけど、そこもあまり魅力的ではない。

とはいえ彼は、狂言回しとして優秀なのです。

基本的には腰は低いので、読者の反発を買うタイプでもない。

だから「問題はない」、というのがわたしの認識です。

(主人公がイヤなやつだったら、小説を読むの自体がイヤになりますから。)

不幸にもこの作品は、二人のレギュラーの会話から始まる。

阿武隈川烏(あぶくまがわからす、刀城の先輩)と祖父江偲(そぶえしの、編集者)。

シリーズのレギュラーキャラです。

この二人が刀城と、水魑の話をするのが第一章。

それが問題・・・だと、わたしは感じました。

三津田さんは彼らを好きみたいだから、申し訳ないけど(汗)。

この二人に人間的魅力があればね、きっと楽しいんだと思う。

個性はある。

ありすぎるほどある(笑)。

ただ、二人とも人物造形にリアリティがなく非常に一面的です。

好人物でもない。

上辺だけのキャラづけしかされていないため、第一章のもたつきが半端なかった。

文章がヘタなわけではないから、読みづらい、というのは変かもしれない。

でもね、早く終わらないかと、ひそかにイライラしたのは事実です(汗)。


以上、書き殴りでした。


あーあ、文句ばかりですね。

イヤなところばかり強調して書きましたが、私はこの作者のファンなのです。

この人の編み出す独特の世界観。

異様な雰囲気、ホラー要素に満ちた本格ミステリ。

そこが好きで、シリーズもずっと追いかけている。

それだけに今回は、かなり肩透かしを食らった気分でした。

ホラー好きじゃないくせに、ホラー度が足りないとか思っちゃうし(笑)。


しっかし、おかしいなあ。

なんでこれが彼の最高傑作とか呼ばれるんでしょう。

謎である。

それともわたしは、何か盛大な読み落としをしてるんだろうか。

皮肉にも・・・というべきか。

この小説でいちばん興味を引かれたのは、とある主人公家族の引き上げ話でした。

終戦後、満州からの決死の引き揚げね。

悲惨といえばあまりに悲惨なのですが、そこには情と知がたっぷりあった。

重いにもかかわらず、吸いこまれるように読めた。

本筋とは直接の関係がない、あくまで設定部分なんですけどね。


ちなみに>>

口直しに今、「厭魅(まじもの)の如き憑くもの」を読み返しています。

シリーズ第一作。

何度も読み返しているから、さすがにミステリとしての驚きはない。

ないけど、異世界を覗き込んでいるようなぞわぞわ感は濃厚です。

むしろ落ち着いて読めるせいか(犯人あてをしなくていいからね)、細部に目が行く。

ディテールまで凝りに凝って、これでもか、と怪異譚を詰め込んでいるのがわかる。

解決する謎と、解決しない謎。

(前者がミステリ要素で、後者はつまり怪談ですね。)

どっちも怖い。

素直に好感のもてる(非レギュラー)登場人物が多いのもミソ。

これが最高傑作なんじゃなかろうか、と。

あらためて感じつつあります。







●では、

またね。。。

【09/09/2015 03:27】 書籍・マンガ | Comments (0)
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藤乃めい

Author:藤乃めい
ロンドン在住の自称☆ヘタレ甘々ほもえろ字書き(兼エッセイ&レビュー書き)。別名=ましゅまろんどん。

2008年秋より、出向で六本木に島流し中。

純愛☆官能大河ドラマ『春を抱いていた』をこよなく、果てしなく愛してます(笑)。岩城さん至上主義。寝ても醒めても岩城京介氏のことしか考えられず、日常生活に支障が出ることもしばしば(爆)。・・・いや、マジで。

常に人生破綻の危機に怯えつつ、今日も愛の溢れる純文学☆ほもえろ道の探求に精進してます(笑)。

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